霜の降りた冬のゴルフ場の朝、笑顔のゴルファー

冬に飛距離が消える本当の理由 — 空気とボールの温度の話

冬のコースで、いつもの番手が届かない。あれは腕が落ちたのではありません。犯人はふたりいます——冷たくて「濃い」空気と、冷えて硬くなったボール。今日はその正体を、数字で確かめてみます。

12月のラウンドで、夏なら7番で届いていた距離がグリーン手前に落ちる。「最近練習してないからなあ」と自分のせいにしがちですが、じつはあれ、かなりの部分が物理現象です。しかも、原因がわかれば打てる手があります。

犯人その1:冬の空気は「濃い」

空気は冷えると縮んで、同じ体積のなかに分子がぎゅっと詰まります。つまり冬の空気は、夏の空気より密度が高い。ボールは飛んでいるあいだ、ずっとこの空気をかき分けて進むので、濃い空気のなかでは、それだけ強いブレーキを受け続けることになります。

どのくらい効くのか。弾道計測器TrackManの公表データでは、気温が10°F(約5.5℃)下がるごとにキャリーはおよそ1ヤード減るとされています。GOLF.comがTrackManを使って行った計測では、もう少し大きく、番手あたり約2ヤード。仮に夏の28℃と冬の5℃を比べると気温差は23℃——この目安を当てはめると、キャリーでおよそ4〜9ヤード、ちょうど番手ひとつぶんが空気に食べられる計算になります。

言いかえると、冬のボールは18ホールずっと、目に見えない向かい風のなかを飛んでいるようなものです。「1クラブ届かない」は気のせいではなくて、ほぼ理科なんです。

犯人その2:ボール自身も、冬眠する

もうひとりの犯人は、ボールの中身です。

ボールのコアはゴムの塊です。ゴムは冷えると硬くなります。硬くなったコアはインパクトでうまくつぶれず、反発が落ちる。つまり冷え切ったボールは、表示より「硬いボール」としてふるまい、ボール初速が出なくなります。

Titleistはこの影響の目安を、気温が20°F(約11℃)下がると飛距離はおよそ1.5%落ちる、と公表しています。230ヤードなら3ヤードちょっと。空気の影響より小さいものの、確実に上乗せされてくる数字です。冬の朝イチのショットで手に残る、あの石を打ったような硬い感触には、ちゃんと理由があるんですね。

そしてここが大事なところですが、ボールの温度は「いまの気温」ではなく「どこに保管していたか」で決まります。 車のトランクに積みっぱなしのボールは、ひと晩で芯まで冬仕様です。Titleistも、室温で保管したボールを使うことをすすめています。

冬の朝にできること

原因がふたつわかれば、対策も素直に決まります。空気のほうは変えられませんが、番手選びとボールの温度は、こちらの手の内です。

  • 番手を素直に上げる。 冬に届かないのは物理であって、腕前の査定ではありません。見栄の7番より、涼しい顔の6番です
  • ボールは家の中で保管して、当日持っていく。 トランク常備をやめるだけで、犯人のひとりは無罪放免になります
  • 2球をローテーションする。 1球はポケットで体温で温めながら、ホールごとに交換する。ホール間でボールを替えることは規則上認められています(競技で「ワンボール」のローカルルールがある場合を除く)
  • ただし、カイロで温めるのはルール違反です。 ラウンド中に人工的な熱源でボールの性質を変えることは規則4.2aで禁じられています。スタート前に暖かい部屋で保管しておくのはOK。線引きは「ラウンドが始まったら、道具でいじらない」です

飛ばない季節の、ちょっといい話

最後にひとつ、冬の弁護もさせてください。冬は地面が硬くしまって、ランが出やすくなります。キャリーで失ったぶんを転がりが少し返してくれるので、トータルの差は見た目の数字より縮まることがあります。

それに、飛ばない前提でプレーする季節は、じつは考えるゴルフの練習期間でもあります。キャリーをあてにできないから、手前から攻める。グリーンまわりでは転がして寄せる。夏には飛距離でごまかせていた選択が、冬はひとつずつ問われます。この季節に身についたマネジメントは、暖かくなっても消えません。

冬のあなたは、飛ばなくなったのではなくて、濃い空気と硬いボールというハンデ戦を戦っているだけ。そう思うと、春いちばんのラウンドでボールがすっと伸びていくあの瞬間は、腕が上がったのと物理のお返しと、両方なのかもしれません。

(あかり)


このお店の商品の選び方は「ZIGZAGの選定基準」に書いています。

ブログに戻る